あるお医者様のコラムで、
「寝るとき靴下を履いていると、汗が発散されにくく、湿ったままになるので、かえって足を冷やす。靴下履くのはNG
と書かれているものがあります。

また、別のお医者様のコラムでは、
「ジョギングなどの運動を行う」「寝る前にぬるま湯足湯を行う」「寝る前に軽いストレッチを行う」

前述のお医者様は、靴下の素材やスタイルについては、まったく言及されていません。

後述のお医者様が提案する生活改善は、基本的に、ご自分の力で活動できる方が対象です。

ご高齢だったり、ご病気のため、ご自分の力では生活改善ができない方もたくさんいらっしゃいます。というか、そういう方たちのほうが、足冷えは深刻!

要介護だったり、寝たきりの生活だったら、何も履かずにいれば、足はすっかり冷たくなってしまうでしょう。。。

今回は、寝るとき履く靴下にお勧めの素材・スタイルを解説します。

靴下の素材選びは重要

寝るとき履く靴下は、「熱くなったから」「蒸れて気持ち悪いから」「蒸れた後足が冷えた」と思っても途中で脱ぐことができない場合もあるので、素材選びは重要です。寝ている間中、熱くなりすぎることなく、快適な暖かさが保てる素材を選びましょう。

汗を吸った後、その湿気が、体温を奪わずに上手く外に逃すことができる素材の靴下なら、足を温め、冷えることはありません!

繊維は水蒸気の汗を吸い、熱を発する

みなさん、寝ている間に靴下を履いていて、起きた時に、なんとなく「生暖かく、足指がべとついて気持ち悪い」感じを体験されたことありませんか?

これは、靴下が汗を吸った後、その湿気がうまく逃されていないから「蒸れてしまった」状態。

汗は最初から液体ではなく、もともとは皮膚から発散される水蒸気。

繊維は、化学繊維でも天然繊維でも、この水蒸気状の汗を吸い、水分として繊維内に蓄えるとき、熱を発生します。

気化熱 ⇔ 凝縮熱

気化熱(蒸発熱)という言葉は聞かれたことありますよね?

液体が蒸気に変わる時に奪う熱 のことです。

汗びっしょりになった後、そのびしょびしょの服を着たままでいると、乾いていく間に、自分の体の熱も一緒に奪われていき、体が冷えていきますよね?日常生活の中でもよく体験していると思います。

繊維は、

水を気化させる時に熱を奪う のです

 

その逆が 凝縮熱(吸着熱)

繊維は、

水蒸気を水にする時に熱を得る 特徴があります。

実感しにくいかもしれませんが、私たちが毎日行っている衣服を着るという行為。皮膚毛穴からは水蒸気状の汗が常に発散されています。それを覆っている繊維(衣服)はこの水蒸気状の汗を水分として繊維内に取り込み、水分の粒が繊維の間でこすれて「熱」を発生させているのです。

凝縮熱は、化学繊維でも天然繊維でも同じように起こります。ただし、素材によって、水蒸気を水として取り込める能力が異なるため、発熱する時間も異なります。

水分吸収率(公定水分率)によって発熱時間は異なる

繊維がどれだけの水分を取り込めるのかの限界を公定水分率(水分吸収率)と言います。

ポリエステル:0.4%
ナイロン:4.5% 

化学繊維は、繊維内にわずかな水分しか蓄えることができません。つまり、短時間しか発熱することができないのです。

一方

コットン:8%
シルク:11%
ウール:16%

天然繊維は化学繊維より長い時間発熱することができます。

しかし、どんな繊維も限りなく水分を蓄えることはできないため、飽和に達すると、

蒸れる → 気化熱で冷える

わけです。

気化熱、凝縮熱の両方を実現できる獣毛繊維

靴下は、肌にあたる内側は水分(汗)を吸い発熱(凝縮熱)し、その水分を靴下外側へ逃す(気化熱)ことができれば理想的。繊維の水分飽和を先延ばし、また靴下内側が熱くなりすぎることなく快適な状態を保てます。

水分吸収率が高い、ウール、カシミヤ、モヘヤなど動物の「毛」繊維は気化熱と凝縮熱の両方の役割を果たせる繊維。

毛繊維は、化学繊維と違って、限りなく細い糸にできないため、薄い編地に仕上げられませんが、その厚みゆえに、水分が飽和に達するまでの時間も長いため、発熱時間も長く、温かくいられます。

スタイルは締め付けないものがお勧め

寝るとき履く靴下は、全体的にフィット感が緩めで、ふくらはぎを締め付けないものがお勧めです。ふくらはぎに履き口ゴムの跡がついてしまうようなものはNG。履き口ゴムが入っていないか、ゴムが緩いものがベストです。

しっかりフィットする靴下は熱がこもりやすく、水分を逃しにくくします。また、フィット感が強すぎると、足が締め付けられて、血行が妨げられ、冷えやすくなります。

そうならないためには、フィット感が緩めで、締めつけがないことに注意してください。

平編み VS パイル編み

平編みの靴下は平たんです。足肌へは面で接しています。

パイル編みの靴下は、パイルごとに点で接しています。パイル編みは使っている糸量が多いので、その分汗をしっかり吸ってくれます。

糸をたくさん使っている = 汗をより多く吸うことができる

パイル編みのソックスは、パイルの一つ一つが汗をよく吸い、凝縮熱によって発熱し、気化熱によって繊維内に蓄えた水分を外へ逃すします。

靴下内が熱くなりすぎることなく、理想的な状態が保たれます。

寝るとき履く靴下選びのポイント

寝るとき履く靴下選びの注意ポイント

  • 天然繊維:特に冬場は「毛」繊維
  • 緩めのフィット感
  • 履き口にゴムが入っていないスタイル
  • パイル編み

素材や締めつけ具合など自分に合った靴下を見つけて、快適な睡眠を手に入れてくださいね。

サーモヘアご愛用者の声

サーモヘアを愛用してくださっているお客様は、「この靴下、数日洗わなくても快適に使える!」とおっしゃるお客様が多いです。

モヘヤ繊維の公定水分率は正確には分かりませんが、

「モヘヤ繊維は、湿度100%の状態で、繊維自体の重量の30%以上の水分を吸収することができる」

という報告をしている研究者もいるのです。※

参考文献
※ Prof. Lawrance Hunter PhD. CTtext FTI ネルソンマンデラ大学 教授 著
“Mohair”, Chapter 2 in “Silk, Mohair, Cashmere and Other Luxury Fibres”