「キッドモヘヤ」って実際はどんな繊維?

アンゴラヤギの1歳までの子ヤギの初毛だけを、特別に「キッドモヘヤ」と呼びます。

子ヤギ独特の細く柔らかな毛は、ふわふわで抜群の暖かさ。
キッドモヘヤは、柔らかな子ヤギの毛でありながら、モヘヤの素晴らしい特性を併せ持つ特別な繊維です。

アンゴラ山羊の毛「モヘヤ」

アンゴラ山羊はもともとチベットやヒマラヤの高地などの寒冷地に生息していたヤギ。
このアンゴラ山羊から刈られる毛が「モヘヤ」と呼ばれます。

アンゴラ山羊は、生まれた時から毛穴の数が変わりません。
この為、モヘヤ繊維としての特性は変わらず、年齢とともに毛穴が大きくなり繊維が太く強くなっていきます。

この強度や太さなどの違いに合わせ、高級素材を求める様々な用途に使わます。

素晴らしい特性「モヘヤ & キッドモヘヤ」

当り前ですが、キッドモヘアもモヘア。
その特質もモヘアと同じです。

ここからは、モヘアとキッドモヘアの特徴を併せてご案内します。

希少性
アンゴラ山羊のモヘヤは、全生産量が世界の天然繊維生産量の0.05%以下ととても希少。
中でも、キッドモヘアと呼べるのは生後1年未満の子山羊から刈り取った初毛だけ。
収穫量が極めて少なく(モヘア全収穫量の約1/6程)、ハイグレードなモヘヤとして高価で取引されます。
滑らかなキューティクル
モヘヤ繊維は、ウール繊維と違って、キューティクルのうろこが逆立っておらず、繊維に対して限りなく平ら。
この滑らかな表面により、ウールのようなチクチク感がありません。
また、キューティクル同士が絡むことがない為、生地を傷めるような毛玉や縮みが極めて少ない繊維です。

キッドモヘアの繊維は、カシミアに近いミクロカウント(25~27ミクロン)。
モヘアのなめらかさとカシミアの柔らかさを併せ持つ、とても優しい肌触りの繊維です。

獣毛の中で最も頑丈な繊維モヘア
モヘアはとても美しく、繊細な素材と思われがちですが、、、
同じ直径のモヘヤ繊維とスチールとを比べた場合、実はモヘヤのほうが頑丈。編み機や織機をすり減らしてしまうほど丈夫なことから、【ダイヤモンド・ファイバー】と呼ばれています。
「成獣のモヘア」ほどの強さではありませんが、キッドモヘヤも【ダイヤモンド・ファイバー】の名に恥じない丈夫で強い繊維です。
モヘアの優れた断熱放湿性
ウール同様、繊維の1本1本が筒状で、中が空洞になっています。
● 外気温を伝導しない断熱性
● 内側の湿気を逃がす放湿性
に非常に優れた繊維。
冷気や蒸れを防ぎ心地良い履き心地を保ちます。
モヘアの弾力性
モヘヤはとても弾力性に富み、元の長さに対して30パーセント引き伸ばした後、元の形に戻ることができます。
この弾力性とキューティクルの滑らかさが相まり、伸びきったり、緩んだり、たるんでしまうことがありません。
成獣のモヘアは繊維の太さと強さゆえに、
皺になりやすいと言われますが、、、
キッドモヘアは、細く柔らかく弾力性がある為、皺になりにくい素材です。

様々なシーンで珍重されるモヘア

モヘヤは優れた光沢と発色性、なめらかでソフトな質感、優れた吸湿性など、テキスタイルに求められる素晴らしい特性を持っています。

年齢によって

繊細で柔らかいキッドモヘアや若いアンゴラ山羊の毛は、高級なアパレルやスーツなどに。

成長し太くより強くなったアンゴラ山羊の毛は、強度と美しさを求められる、高級なシートやカーペットなどのインテリア類に主に用いられます。

シーズンによって

夏には、夏物紳士服地などの軽く涼感に優れた製品に。
冬には軽く保温力に優れたニットやアウター素材として珍重されています。

混紡として

単体では非常に高価な繊維のモヘア。
他の繊維と混紡され、スーツなどの高級アパレル素材、劇場の緞帳など豪華なインテリア素材、高級車の内装など、その特性を生かし様々な用途に使用されています。